今回発表した論文は、タイトルのとおり「平和でないと観光は成り立たない」という一般論は本当に正しいのかということを問うた論稿です。というのも、私が研究している中央アメリカの国々は、近年、治安悪化が進んでいます。それにも関わらず、観光客数は年々伸び続けているという事実があるからです。ひょっとすると、「平和でないと観光は成り立たない」という前提自体の見直しが必要かもしれません。しかし、このことを検証することは容易ではありません。平和と観光の関係性を調べるには、「平和」に関する膨大な指標を検討しなければいけないからです。今回の論考では、全てを扱うことはできないので、中米7カ国を対象に、殺人発生率と旅行客数の関係性を比較しました。それぞれの「伸び率」を経年変化で比較したところ、両者に相関関係は見られませんでした(殺人発生率が増加に関係なく、旅行客数は伸び続けていることが分かりました)。